幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。
山根沢大岳氏の新邸工事は、私たちが旅行から戻った週に始まった。
監修を入れたために、当初の予定よりは1週間遅れてしまったのだが、幸いにも永森さんの設計案に大きなケチは付けられなかったので皆がほっとした。
基礎工事が進む中、毎日様子を見に行く永森さんに付いて、私と平川さんが1日交替で現場に行っている。今日は私の当番だ。
行くと当然ながら、チェックのために野々原先生も来ている。勉強のために同行させたはずの中邑さんは、なぜか今日は来ていなかった。
「永森くん、穐本くんおはよう」
「おはようございます。……あの、アシスタントの女性は?」
私が思い浮かべていた疑問をぶつけた永森さんを、先生は「ああ」と意味ありげな笑みとともに見やった。
「慣れない出張のせいか、熱を出してしまってね。ホテルで休ませているよ」
「そうですか」
そう受けた永森さんは、隣の私にちらりと視線を送る。「本当だと思う?」と言いたげだ。
永森さんの目線に気づいた先生も、私をじっと見つめた。こちらは「余計なことを言ってないだろうね」という恫喝のこもった目つきで。
反射的に、背筋がぶるりと震えた。まったく、心臓によろしくない状況だ。
現場を見に来るのは好きなのに、今回に限っては、来るたびに異常に疲れてしまう。そのせいなのか、このところあまり食欲がなかった。