君に贈る「また明日」を。
今日から高校生になった私は新品の制服を着て高校の門をくぐった。教室までは案内を見ながら進む。
「えっと、一年三組……あ、ここだ。」
ガラガラ、と無機質な音を立ててドアが開く。一瞬クラスにいる数人の視線が集中したが気にせずに黒板を見た。黒板には席順が書いてある。まぁ、私は一番前だろう。いつも出席番号は一番だ。一番端の前の席に座る。机の上に天野春歌と書いてあるシールが貼られていて小学生みたいで少し笑った。
ホームルームが始まる五分前、殆どの人が揃っていた。ガラガラ、とドアが開き、誰かが入ってきた。その人は黒板を見て、私の後ろの席に座った。
「あ、はじめまして。私の名前は天野春歌です。よろしくね。」
「はじめまして。俺の名前は五十嵐紬です。こちらこそよろしく。」
甘いソーダみたいな笑い方をする男の子だった。
「俺、殆ど出席番号一番だったから二番って違和感があるね。」
「私は二番になってみたいよ」
そんな会話を交わしてホームルームが始まった。
一通りホームルームが終わり入学式のために体育館へ行った。その間、誰かと言葉を交わすことは無かった。
その日はすぐに解散となった。高校デビュー初日と言っても特に誰かと話すことはなく、会話を交わしたのは五十嵐君だけだった。
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