星の降る夜
――見間違いかとも思ったのだけれど。
近づくにつれて、はっきりとしてきた輪郭は、最も会いたかった人物を形作っていく。
あの日のように、塀の上に座り込んで空を見上げていた彼女の横顔から、表情までは読み取れなかった。
「……咲?」
なんでもない、という声色で、その名前を呼ぶ。
緩みかけた頬はマフラーで隠して。
……あぁ、俺も素直じゃないな。
ゆっくりと こちらを向いた彼女も また、特に表情を変えることはなかった。