俺にしときませんか、先輩。
落としたい人いるんで、相談乗ってください





*

*



「………あ、」



そんな、間の抜けた声と一緒に、振り向いた顔を見て思ったことはひとつ。



…やっぱり、浮気してた……。




ちょうど影ができている廊下。
それも、2人分の。

細い腰に手を当てているのは私の彼氏で、その相手は………あー、知ってる子だ。




「なんで、おまえ、ここに…」



なんでって、本気で言ってるんだろうか。

どう考えても、それはこっちが言いたいことで。


私は美術部なんだから、美術室に行くには、その前の廊下は必然的に通ることになる。

それなのに、よりよって、ここで──。




「あー、マジか」


「……隠す素振りくらいしたら?」


「無理だろ、おまえ、そういうとこ、勘いいし」




うん、まあね、合ってるけど。

お互い向き合って身体をくっつけてたんだから、どんな言い訳されたところで、なにをしようとしてたのかくらい、わかる。
< 1 / 214 >

この作品をシェア

pagetop