俺にしときませんか、先輩。


それから何回か家に遊びに来るようになった先輩が、俺の部屋に勝手に潜り込んでいたのは、姉ちゃんの誕生日の日のこと。


「なにしてんの?」

「しっー、今、かくれんぼ中なの」

「ここ、俺の部屋なんだけど」

「お邪魔してます」



ぺこ、と頭を下げてそのまま居座るつもりらしく、小さく丸まる背中。

待っても待っても姉ちゃんが来なくて、退屈になってきたのか、トントンと肩を突かれた。



「さっきの夜ご飯、あんまり食べてなかったね。もしかして、お腹痛いの?」

「…べつに」



姉ちゃんの誕生日。

どうしても思い浮かんでしまう母さんに、箸を進める気にならなかった。



「由都ってあんま笑わないよね」

「っ…」



関係ないじゃん。

ここにも無神経なのがいる。
そんなふうにうざったくなって。


「ちょ、なにす…」


それなのに、空気が読めないのか、よーしと意気込んで、勝手に紙と鉛筆を手に取る。
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