俺にしときませんか、先輩。
すぐにぽーっと赤く染まっていく頬。
我が親友ながら、わかりやすい反応で笑ってしまう。
あー、ほんとに、沙葉ってかわいい。
ちょーかわいい。
「さ、サナちゃんは?」
「ん?」
「恋愛どう?
サナちゃんあんま彼氏のこと話さないからさ」
「…あー、まぁ、ぼちぼちかな」
私の彼氏はほかの女子と腕組んで消えていったよ、なんてことは言えるはずもなく、左に視線をずらしながら誤魔化す。
「倦怠期過ぎた?」
「え?」
「ほら、去年の修学旅行で、彼氏と倦怠期だって言ってたじゃん」
「……あ」
そういえば、そうだ。
と、思ったのと同時に驚く。
沙葉ってこういうところは意外と記憶力いいんだから、もう。
どう答えようか迷っていると、背中側にある木々が風に揺られて、ゆるりと声が落ちてきた。
「朝浦(あさうら)さん、俺の沙葉、とんないでくれる?」
……あーはいはい、彼氏様の登場だよ、沙葉。