俺にしときませんか、先輩。


「そんなに俺を悪者にしたいなら言ってやるよ」



やめてよ、と吉野さんが止める声も届かず。

かといって、私の真意なんて彼に伝わるはずもない。



「俺たちはとっくに別れてる。俺の浮気が原因でな」



みんなが息を呑んで驚く表情を見るのは、これが初めてじゃなかった。








そもそも蒼真からの告白で付き合いだした私たちは、最初の頃は人並みにうまくいっていた方だと思う。

デートだって週に2回は欠かさず行ったし、お互いを知るために趣味を広めたりもしたし、不意に好きだと言ってみたりもした。

それが遠い昔のように思えるのは、今の状態に慣れてしまったからで、私たちふたりにだって確かにそういう瞬間はあったのだ。


いつからひびが入ったのか、正確なことは覚えてない。

だけど、蒼真にも元カレにも、いつも言われることがあった。
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