俺にしときませんか、先輩。

たぶんそれが、いけなかったのかもしれない。


背中をさすってくれた手は温かかった。

頭を撫でてくれた手は優しかった。


そんなふたりに甘えて、2回目の浮気が発覚した時も、同じように弱いところを見せていた。



だけど、ここで、私は自分の大きな勘違いを思い知ることになった。



いつものように、またねと手を振って学校を出て、途中で忘れ物に気づいて引き返した日。

まだ数人が残っている教室で、モエちゃんとカヨコちゃんの話し声が聞こえてきた。



「大丈夫?」

「ううん、大丈夫じゃないかも」

「はははは、似てるそれ!」



潜り込んできた会話に、中に入るな、と言われてるように足が止まってしまった。



「ううん、じゃねーよ。こっちが気遣ってんのにさ」

「それな。だいたいほんとに傷ついてんの?ってかんじ。どうせすぐに新しい男できるくせに」

「モテますよアピールじゃない?」

「うわー、それがちむり」
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