俺にしときませんか、先輩。

目の前の由都はご機嫌斜めなようで。

眉の間にしっかりと線ができている。



「先輩はかわいいですよ」


「……うん」



普通に笑い飛ばすつもりだったのに。

由都があんまり真剣な顔するから、できなくなってしまう。



「いーですか、今度あのクズ男がなんか言ってきたら、真っ先に俺に言ってくださいよ、とっちめてやりますから」



不機嫌をいっそう濃くして。

私のために怒ってくれている表情を横から見つめていたら、心臓のあたりが僅かに震えた。

思わず握り込んだ指先が熱を生んで、なぜか雫がはら、と落ちてくる。



「…先輩」

「あ、あれ……や、やだなーもう」



人差し指の腹で拭っても出てくる涙は対処のしようがなくて。

お、俺、どうすればいいですか、と。
泣いてる私に戸惑う由都があたふたしはじめる。



「…由都のバカ、行くよ」

「え、ちょ、先輩…?」

< 129 / 214 >

この作品をシェア

pagetop