俺にしときませんか、先輩。
目の前の由都はご機嫌斜めなようで。
眉の間にしっかりと線ができている。
「先輩はかわいいですよ」
「……うん」
普通に笑い飛ばすつもりだったのに。
由都があんまり真剣な顔するから、できなくなってしまう。
「いーですか、今度あのクズ男がなんか言ってきたら、真っ先に俺に言ってくださいよ、とっちめてやりますから」
不機嫌をいっそう濃くして。
私のために怒ってくれている表情を横から見つめていたら、心臓のあたりが僅かに震えた。
思わず握り込んだ指先が熱を生んで、なぜか雫がはら、と落ちてくる。
「…先輩」
「あ、あれ……や、やだなーもう」
人差し指の腹で拭っても出てくる涙は対処のしようがなくて。
お、俺、どうすればいいですか、と。
泣いてる私に戸惑う由都があたふたしはじめる。
「…由都のバカ、行くよ」
「え、ちょ、先輩…?」