俺にしときませんか、先輩。







あれからちゃんと退散して、沙葉と新谷くんをふたりきりにした私を誰か褒めてほしい。


教室の窓際でそんなことを思っていると、横からイスをギーっと引く音がして、すぐ真横にクラスの中心人物であるモエちゃんとカヨコちゃんが顔を覗かせた。



「どーだった?この間のデート!」

「蒼真くんとばっちり楽しんだ!?」


「え…、あーうん、楽しかったよ」


このふたりは他人のことに興味津々。
とくに色恋沙汰には。

ニコニコしている顔に文句でも言おうものなら、翌朝、陰口と舌打ちが待っているだけなのをクラス中が知っている。だから、私も余計なことは言わずに頷く。


「えー、それだけ?もっと聞きたい!」

「ねー!わたしもー!」


デートなんてしてないのに、これ以上なにを話せって言うの。

私はそんなに想像力豊かでもないから、嘘をつこうにもアイデアがまず、浮かんでこない。



「あ、いいところに来た、蒼真くん!」
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