俺にしときませんか、先輩。

ただでさえ、どうしたら穏便に別れたと思ってもらえるかで悩んでるのに、蒼真とそのふたつ斜め前にいる浮気相手……いや、今は新しい彼女かもしれない吉野さんは、何食わぬ顔をして座っていた。


演技だとしたら、すごいよ、あなたたち。

ここにいるみんなが、あのふたりがイイ関係だなんて、思いもしないんだろう。




……あーあ、2年生の頃に戻りたい。

一番よかった、あのクラスが。

やたら仕切りたがるキャラもいなかったし、付き合っていた蒼真とも別々の教室で、なにより、沙葉がいた。

他とはちがう、興味とかそんな軽いもので根掘り葉掘り話題のネタを聞き出そうとする人たちじゃなくて、ちゃんと私を心配してくれる親友。


3年生に上がってからは、沙葉とは離れたし、蒼真と同じクラスになって周りから探られるしで、正直ちょっときつい。



「…はぁ」


そして、問題はこのあとにも残っているのだ。


薄暗くなりかけている空を軽く睨んでみる。

時よ止まれって魔法が使えるなら、今こそ使いたい。

だけどそんなキラキラな杖は現れてくれるわけないから、私は観念して約束の場所へ向かった。







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