俺にしときませんか、先輩。
「先輩、もうちょっとゆっくり歩きましょうよ」
握られている手が若干後ろに引かれて、仕方ないなと思いながら歩幅を合わせる。
進むたびに、ドンドンと下の方から音がして、どこからか風もやってくるようだ。
それでも由都は怖がる様子もなく普通に見える。
「! わっ、」
さらに前に踏み出した瞬間、急に目の前が青く光って、白い壁に血塗られた犬と人間のミックスのような仮面がたくさん映った。
…凝ってるなあ。
構造は頭にあったけど、演出までは知らなかったからびっくりした。
「うぎょ、ぉ…!!」
…………え?
耳を疑うような隣の大声に目を向ければ、さっきまでなんともなかった由都が顔を歪ませて目を見開いている。
「どしたの、由都」
「お、おれ、犬、無理なんです」