俺にしときませんか、先輩。




もうすぐ梅雨になることもあってか、放課後の美術室はジメジメしていた。

いつもなら、ここにいるのは私だけ。
時々、部活が終わっても絵が描きたくてここに残ったりするから。

けど今日は…………そう、由都がいる。



昼休みが終わる5分前、美術部顧問の杜秋(とあき)先生に、部活がない日に部外者を入れてもいいですかと許可を取りに行ったんだ。

もちろん、だめです、と言われることを期待して。

それなのに、杜秋先生は、親指と人差し指の爪をくっつけて、ぜんぜんいーよとオーケーを出した。

よくないよ、これで完全に行けない言い訳がなくなっちゃったじゃん。



「先輩、ぼーっとしてないで、話聞いてくださいよ」


長机を挟んで由都と目が合う。


…はいはい、恋愛相談ね。

そうはいっても、なにから始めれば……

よし、まずは事情把握だ。



「好きな子って、どんな性格?」

「ちょっと抜けてるとこ、ありますね」
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