俺にしときませんか、先輩。
そう言われて、まだほんのり熱を持っていたのか、すぐに頬に手をやる。
一歩、また一歩、近づいてくる水戸さんの表情がだんだん強張っていくのがわかった。
「水戸さ、」
「ふざけんなっ」
「っ、」
ドンッと両肩を押され、もつれた足でドアに背中をぶつける。
困惑して水戸さんを見ると、本当にふざけるなと言いたげな目で強く睨まれた。
「サナちゃん…!?」
周りが何事かと足を止めるなかで、私のクラスに来る途中だったのか、事態に気づいた沙葉が駆け寄ってくる。
「ちょっと、あなたね!」
「沙葉、いいの」
「でもっ」
水戸さんに怒りそうな沙葉を首を振って止める。
それを見ていた水戸さんには、はっと鼻で笑われた。
「大人な対応のつもり?」
「……」
「いいよね、あんたは、じっとしてても構ってもらえて」
……水戸さんがこんなふうに怒るのも当然だ。