俺にしときませんか、先輩。
スカートの裾の上で震えている拳を見てそう思う。
由都のことが好きな水戸さん。
持ち前の愛嬌とかわいい笑顔で何度も話しかけて努力してるのを、見てきた。
そんな水戸さんからしたら、私みたいな存在はきっと一番ムカつくにちがいない。
恋愛相談に乗るだけのつもりが、いつのまにか由都といるのが楽しくなってしまった。
後輩に甘えて、助けてもらって、先輩のくせに。
そして、いまさら、由都を好きになったなんて…………ふざけんな、だろう。
薄々勘づいていた想いが胸のなかで大きくなって、やっと認められた。
だけど、この先、由都の隣にいるのは私じゃない。
「好きにならないでって願ってたのに…」
キッと両目をつりあげた水戸さんがくるりと向きを変えて颯爽と去っていく。
文化祭終了の放送が流れるなか、私はただただ、下を向いていた。