俺にしときませんか、先輩。
「ほぉ」
「負けず嫌いで、友達命で、あと、かわいい」
真剣に耳を傾けていた最中、薄い唇が紡いだ『かわいい』に、不覚にもドキッとしてしまった。
今までの恋人からは、一度も言ってもらったことのない言葉。
蒼真も例外ではなくて、半年と数ヶ月付き合った、たぶん一番長く続いた相手。
だけど、私はまたもや飽きられてしまったんだから、しょうがない。
悲しいとか悔しいとか、そういう感情は初めて浮気された時に置き去りにしてきた。
……うん、私は大丈夫。
「…先輩?」
「あっ、うん、聞いてるよ。
それにしても、負けず嫌いで友達大切にしてて、そのうえかわいいって…………沙葉みたい」
「……………ぜんっぜん、ちがいますけど」
「え」
ピンときた親友の名前を言っただけなのに、なぜか怪訝な顔をされる。
まあ、好きな子がお姉ちゃんみたいって言われたら、さすがにいやかな。