俺にしときませんか、先輩。
「一緒に帰るの、嫌ってことですか?」
「そうよ」
「なんでですか?」
「なんでも」
「またそれ…、俺、なんかしました?」
「してない」
じゃあなんで、とぶつぶつ言ってくる由都と小競り合いが続いて、気づいたら校門をくぐっていた。
……いやいやいや、そろそろ諦めて?
むしろなんでそんなに私と帰りたいのよ。
由都に追いつかれまいとスタスタ先を急ぐけど、歩幅が大きい方の私も、由都の足には叶わず…。
「先輩っ」
影がふまれる。
立ち止まるしかなかった。
「なんか怒ってますか?」
少しだけ焦りの入った声でそう聞かれる。
怒ってなんかない。
どうしたらいいかわからないだけで。
見上げた由都の瞳に身体の芯が掴まれたような感覚がした私には、方法がひとつしか浮かばなかった。