俺にしときませんか、先輩。
「じゃあじゃあ、電話くれた日にサナちゃんが落ち込んでたかんじがしたのと、由都って関係あったり?」
「…うん」
やっぱり見抜かれてた。
なるほど、と呟いた沙葉が急に、ん?と首を傾げて、くっと私に視線を向ける。
「まさか、由都、サナちゃんになんかした?」
「え?」
「だって落ちこむってことは、なんかされたんでしょ?」
「いやいや、軽く失恋しただけで」
「はあい!? 全方位どこから見ても素敵なサナちゃんを断ったの!?」
うん、いったんクールダウンしようか。
そのあげている拳はなにに使うつもりなの。
振られてないし由都はなにも知らないからと言うと、ほぉ、と、たぶんわかってない沙葉が斜めに首をひねった。
「由都のことは好きだけど、どうこうするつもりはないの」
革靴がざざっと砂をこする。
見上げた空と一緒に吸い込んだ風は、夏の終わりのような匂いがした。