俺にしときませんか、先輩。
今だってほくろで思い浮かぶのは、ひとりだけ。
いいかげん、線を引かなきゃダメな気がした。
「水戸ってさ、俺のこと、どう思ってんの?」
「っ…」
唐突な問いに、水戸の瞳が揺れ動く。
チケットが弧を描いて下ろされた。
「それ、本気で聞いてる? 気づいてるんじゃないの?」
「…たぶん、わかる」
俺に好意を向けてくれている。
今までの水戸の行動を思い返して辿り着く俺の考えは、間違ってないんだと思う。
それと同時に、悪いとも思った。
「俺は、好きな人がいる」
「……なんで私じゃないの?」
「その人しか見えないから」
街中にいても一番に見つけるのは、先輩。
見つけられなくても、探してしまうのは先輩。
そして見つけたら、自然と笑ってる。
先輩は俺にとってそういう存在だ。