俺にしときませんか、先輩。

「私は……その人のこと、聞いてるんじゃない」


下を向いた水戸の肩がわずかに震える。


「なんで、私はだめなの?」

「…水戸」

「なんでなの!?」

「なんでとかじゃない。俺が水戸を、気にしたことがなかった」


素直に思ったのはそれだった。

今、なにをしてるのか。

今日の機嫌はどうか。

水戸には、そういう関心が向かなかった。



「っ、一度も? 私が由都くんの周り囲って、毎日おはようって声かけて、由都くんだけ見てたのに、一度も………気にならなかった…?」

「……ごめん」


謝った先で、はぁ…と呆れをはらんだため息が落とされる。

次にあげた水戸の顔には涙はなかったけど、代わりに怒りが満ちていた。



「どうせ好きな人ってあの先輩でしょ」

「っ」

「ラブレターまで書いちゃってさ、ほんっと腹立つ」
< 185 / 214 >

この作品をシェア

pagetop