俺にしときませんか、先輩。

吐き捨てられた言葉に耳を疑う。


「なんで、ラブレターのこと……」


文化祭の時もそうだった。

先輩を好きなことを水戸は知ってて。

それだけじゃなく、ラブレターまで知ってるなんて、本当にどういうこと?



「あれ、先輩には渡ってないよ」

「なに言って、」

「私が盗ったんだから」

「…は!?」



思考がしばらくフリーズする。

驚いて声が出ない俺をよそに、ふんっと鼻を鳴らした水戸が床を睨む。


「水戸が、あれを、盗った?」

「そうよ! 言っとくけど、返してなんて言わないでよね、あんなの、破り裂いてやるんだからっ。……だ、だいたい、私に振り向かないあんたなんか、もうこっちから願い下げだから!!」



そう言って走り去っていく背中。

いつもの水戸と違いすぎて、呆気にとられて立ち尽くす。



…嘘、ではないよね。……マジか。
中学の時、書いたあのラブレターを、水戸が……。



そのあと、話しかけんなオーラ満載でイスにどっぷり座っていた水戸を見て思い出した。

いつだったか、こそこそ話していた女子ふたりによると、暴走した水戸はそっとしておいた方がいいらしい。




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