俺にしときませんか、先輩。

「こっちですか?それとも、こう?」


そのうえ、一旦離れた手をひとつずつ指がずらされて、またぎゅっと握られる。

真剣にやってる様子を見て、こっちだけがあたふたしているのもおかしい気がして私も応える。


「そっち」

「…ふっ、了解です」


……なんで笑ったの、いま。

笑う要素あった?


覗き込むように由都を見上げても、瞳がさらに横に広がって微笑まれるだけで、表情は崩れない。



「ていうか、手繋ぐ練習って……なんで付き合ってもらえる前提なの」

「……それもそうですね」



そうよ、まずは仲良くなる方法とかを探るかんじじゃないの?
なのに、いきなり手を繋ぐって…


「でも、今度こそ、捕まえたいんです」



意気込む由都は晴れやかな顔をしていて、私にはちょっと眩しくて視線を外す。

…ふーん、それほど好きってことだ。
捕まえたいって、若干ななめってる気もするけど。


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