俺にしときませんか、先輩。
「……先輩、知ってますか」
「うん?」
「30秒、手繋いだまま目を逸さなかったら、その男女は恋愛関係にならないんだってこと」
「……へえ、知らなかった」
そんな言い伝えあるんだ。
軽く反応して流れるかんじだと思ってたのに、由都が座っていたイスが私の方に傾く。
「やりませんか、手繋ぎゲーム」
「…は?」
「手 繋 ぎ ゲ ー ム」
「聞こえたわよ!
そうじゃなくて、なんで…」
「面白そうじゃないですか」
…全く?
全く面白さは感じないんだけど?
いいってまだ言ってないのに、なぜか私のイスまで軽々と向きを合わせられる。
「30秒ですよ」
「…っ、」
やるの?
これは躊躇せずやれよって流れなの?
…あーもう知らないっ
一度だけ強く目を閉じてからくっと開ける。
由都の方は準備万端なようで、微動だにしない瞳がただただ私を見つめている。