俺にしときませんか、先輩。
「…そう、だったんですか」
「うん」
「ていうか、先輩、今、俺といるのに、べつの男思い浮かべました?」
「なっ、それは由都の誤解をほどこうと思って」
俺、結構嫉妬深いですからね、と。
笑って手を引く由都に連れられて1階まで下りたところで、数メートル前にこっちに向かって歩いてくるモエちゃんが見えた。
手を繋いでいる私たちに気づいて、驚いたような顔をする。
そのまますれ違ったあと、由都が小さく聞いてきた。
「いいんですか、先輩、見られましたけど」
「うん、もう気にしない」
明日にはコソコソ囁かれるだろう噂も、べつに言いたいなら言わせておけばいいと、今はそう思う。
「…じゃあ、俺、先輩が彼女だって自慢しまくってもいいですか?」
「しまくるの?」
「はい」
「ははっ、どーぞ」