俺にしときませんか、先輩。


由都と帰る道のりは、ドキドキして、楽しくて、嬉しくて、本当にあっという間だ。


私は手を繋ぐのが好きだけど、由都は腕を組むのも好きらしく、試しに両方を合わせてやってみたら、通りかかったおばちゃんに変な目で見られて、笑った。


私の話に何度もうなずいて、楽しそうに聞いてくれる由都が好き。



「先輩」

「ん?」

「明日、朝一番で電話かけるんで、昨日のことは夢じゃないって言ってくださいね」



赤信号で待っていると、由都がそんなことを言う。

ぎゅう、と繋いだ手が熱を帯びた。



いつか私も由都に追いつきたい。
私のことをたくさん知ってる由都に。

私も由都のことをたくさん知ったら、今よりもっと、いろんな好きを由都に伝えられるから。



湧きあがってくる感情に、離れがたい、と。

唐突にそう思って。

点滅する赤を前に、思わず横道に逸れる。



「由都、今日は、めちゃくちゃ遠回りして帰ろっか」



手を引いた先で、少し驚いた由都が優しく笑った。




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