俺にしときませんか、先輩。
先輩じゃないと意味ないです
*
*
「サナちゃん、なんで先週、一緒に帰ってくれなかったの?」
「えっ」
いつもの朝、通学路を歩く沙葉が不思議そうに聞いてくる。
先週っていうのは、もちろん水曜日のこと。
部活がない日は沙葉と帰ることが日課になってるから、たぶん疑問に思われるだろうとは思ってたけど。
…勘づくの早いよ!
まだ当分、なにも言われないでしょって、たかを括ってたのに。
「えっと……絵!絵を描きたい気分の日で、」
「そうなの?」
「そう。ごめんね、先、帰ってもらっちゃって」
「ううん、サナちゃんが絵大好きなの知ってるから。そっか、ならいいんだぁ」
……どうやら、やり過ごせた、みたい?
でも、これからなんて言おう?
あなたの弟の恋愛相談乗ってますって?
………言えない、言えるわけない。
頭を抱えていたら、すぐそばまで来ていた校門を身体がくぐり抜け、ちらほらと同級生が見えてくる。