俺にしときませんか、先輩。

昇降口前では少し珍しいのか、姉弟喧嘩に数人が顔をあげる。

そのなかでひとり、スタスタと間に入ってくる人物がいた。



「ダレ、その生意気ぼうず」


…出た、新谷くん。

本当にこの人はいつも神出鬼没というか、なんというか。


びっくりして目を丸くしてる沙葉に、おはよ、と、それはもう甘く微笑む。



「あ、新谷くん…。えっと、この子、わたしの弟で、由都っていうの」

「へえ、弟くんね」



そっか。新谷くんと由都は初対面か。


それにしても、なんか、雲行きが怪しい。
ふたりの瞳の具合的に、ぜったいお互い、印象悪そう。



「これが姉ちゃんの彼氏って人?」

「そっちこそ、沙葉の身長イジるわりには、チビじゃん?」

「はあ?」



「ぷっ」

「ちょっと先輩、今、笑いました?」

「え、あ、」



だって、おかしかったんだもん。

新谷くんからしたら、由都は低く見えるんだろう、ていうか、新谷くんが高すぎるんだ。
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