俺にしときませんか、先輩。
下駄箱に到着して革靴を脱ぐ。
友達2人に呼ばれた由都は、じゃあ、と言って廊下の角へ消えていった。
私も教室へ行こうと足を踏み出した直後、
「朝浦先輩、ですか?」
「…え?」
可愛らしい声が聞こえて振り向く。
そこには、私を窺うように覗き込むひとりの女の子。
「そうだけど」
さっきの子だ。
由都の好きな子。
あれ?でも、なんで私を知って…
「由都くんのお姉さんの親友なんですよね?」
「…あー、もしかして由都から?」
「はい」
由都ってば、なに話したんだ。
だいたい、私と由都はそこまでお互いを知っている仲でもないのに、それなのに、私が話題になることって…、あるのか?
「先輩、彼氏さんいますよね、サッカー部の」
「……えっと、よく知ってるね?」
「私、そういう情報早いんです」
噂好きのうちの後輩の美術部員みたいなこと言う子だなあ。