俺にしときませんか、先輩。
思わぬ質問に思考がストップする。
…好きな人。
「なんですか、その間。あ、もしかして、俺とか?」
「自惚れないで」
「はーい」
由都の冗談にキッパリ返して、私の脳裏に浮かんだのは………誰もいない。
だから正直に答える。
「今はいないかな」
「…へえ」
「いい人いたら紹介してよ」
「ぜったい嫌です」
「なんでよ」
「なんでもです」
なぜか首まで振って断られる始末。
なんだかムカついて私も負けじと対抗する。
「じゃあ私だって恋愛相談乗らない」
「それは……先輩の秘密と交換条件で約束したじゃないですか」
あれ、本気にしたのか、由都の顔がちょっと困ってる。
「それに先輩、そんなに彼氏ほしいんですか?」
「んー……わかんない」
本当に自分でも、よくわかんない。
まあ今はどうせ、蒼真とのこともあるから彼氏つくれないけど。
少し痺れてきた足を傾けると、由都が急に起き上がった。
「俺の相談相手は先輩ですよ。先輩じゃないと意味ないです」
思ったより至近距離。
片手をついた由都の少し斜めっている影が私に被る。
その揺らがない瞳を見て思った。
私、由都のまっすぐな目に、弱いかも。