俺にしときませんか、先輩。
言われてみれば、篠崎くんはいつもひとりで、誰かと話してるのを見かけたことがない。
「これとこれは私が持つね」
「…ありがとう」
半分くらいを手に乗せて、よっと腰を上げたんだけど……結構重かった。
腕力には自信がある方だけど、これをひとりでなんて、やっぱり男子って力持ちだ。
なんてことを思いながら、篠崎くんの方を見た。
なんとか耐えている指先は赤くなっていて腕はぷるぷる震えている。
どうやら篠崎くんは力持ちなんじゃなくて、頑張り屋さんの方らしい。
「重いよね」
「うん、そうだね」
「篠崎くんっていつもこういうの運んでて偉いね」
「いや、僕は、ほら、……オロオロしてるからさ、先生からしても僕なら断らないだろうとか思われて、頼まれるだけだよ」
「…そんなことないでしょ」
「え?」