俺にしときませんか、先輩。
「頼み事したくなる人って印象いい人だよ、少なくとも私はそう。篠崎くん、真面目でしっかりしてて、そういうところ、頼りになるって思ってる人もいるよ、きっと」
わりと静かめで目立たないけど、教室の掃除、サボらずにしっかりやるところとか、宿題を集める時に忘れた生徒の言い訳をうまく先生に伝えてるところとか、篠崎くんってようは、いい人なんだと思う。
「朝浦さん、いい人だね」
「え?」
「いま、思った」
「はは、そ?ありがとー」
いい人か。
なんか、照れる。
篠崎くんと話しながら階段まで来たところで、難関が待ち受ける。
この教材は職員室に届けるみたいで、この先、つまりは階段を上がらなきゃいけない。
そろそろ手が痛くなってきた。
早く歩こうにも重さがあって自由にはいかないし。
頑張るしかないと、一段目に踏み出した時だった。