俺にしときませんか、先輩。

なんで、と聞こうとしたけれど、由都はもう階段の半分先で。

その後を篠崎くんが続く。


「職員室でいいんですか?」

「あっ、うん」


ふたりが上っていくのを目で追いながら、私はぽかんと立ち尽くした。



……由都って、心配症すぎる。

そりゃあ重かったけどさ、絵を描く手がどうとか考えもしなかった。



恋愛相談で関わりが増えてから、いろんな由都を見てる気がする。

そもそも、沙葉の弟だったから何度か遊んだこともあって。

だけど中学の後半くらいから、由都には避けられてる気がしていた、会うたびに会釈だけして通り過ぎていくから。


だから高校で久しぶりに話したときは結構驚いた。

てっきり由都には嫌われてると思ってたのに、助けてくれたし。




「朝浦先輩」


少しだけ中学の頃を思い返していたら、すぐ横まで来ていた水戸さんに気づいて、あっと声をあげる。
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