俺にしときませんか、先輩。
「先輩のせいです」
「え、私?………べつにそんなに急がなくても歩いてくればよかったのに」
「ちがいますよ、ていうか見ないでください」
「うわっ」
由都の手が伸びてきて、ピタッと私の目元にくっつく。
「…本当に見ないでください」
「なんで」
「なんでもです」
出た、由都の口ぐせ、なんでもです。
理由も言ってくれないから、とりあえず、赤い顔を見られるのが嫌なんだなと思って、私は目をつむる。
「わかったから手離して。目閉じてるから」
そう言うと、由都の手がおそるおそる離れていくのがわかった。
これで終わればよかったんだけど、私のイタズラ心が働いて、片方の目だけ開けてしまう。
「っ、先輩」
「うはは、真っ赤」
案の定、あわてた由都の顔はまだ真っ赤で、それがおかしくて笑ってしまう。
どう走ったらこんな赤くなるの。