俺にしときませんか、先輩。
「…そうやって、無邪気に笑うのもやめてください」
今度は顔ごと逸らした由都がうつむく。
…なんてやつだ。
見るのもだめで、笑うのもだめなんて。
じゃあ私はいったいどうしてればいいのか。
「好きなのどうぞ」
しばらくして落ち着いた由都が、私の隣に座って紙袋を差し出してくる。
私はそのなかから一番好きなあんぱんを食べた。
「残りはあげます」
「え」
「持って帰ってください」
「いいの!?」
「ふっ、はい」
なんてやつだ、なんて思ったこと取り消すよ、由都。
なんていい子なんだ。
紙袋のなかにはまだ5個は入ってるのに、それをぜんぶくれるなんて。
「ありがと!」
ラッキーすぎるって、こんなの。
うきうき気分でいっぱいになった私は、今日あった嫌なことなんてすっかり頭のなかから消えていた。