俺にしときませんか、先輩。
由都side
☩
☩
「ゲームしたい」
次はどこに行こうか話していた時、先輩が呟いた一言。
たしか、この近くにはゲームセンターがある。
そこに行こうということになって、残りのパンを鞄にしまって歩き出した。
5メートルくらい進んだ先で、漂いながら迷っていた手を思い切って繋ぐと、それに応えるように先輩も握ってくれて。
…あー、やばい。
今、めっちゃにやけてる自信がある。
黒に染まりかけている空に、まだもうちょっとこのままでいたいという欲張りが顔を出す。
「由都ってぜったいモテるでしょ」
数分歩いたところで、ふいに先輩が聞いてきた。
「告白は何回かされます」
「やっぱり」
「でもちゃんと断ってます、好きな人いるからって」
「よっぽど好きなのね」
「はい」
……先輩のことですよ。
諦めようとしてもできなくて、突っ走ろうと思っても下がってしまったり。
感情が忙しく動くのは、ぜんぶ先輩だからで。
これだけは断言できる。
「その人のこと、一番想ってる自信、あるんです」
まっすぐ目を見てそう言うことはできたのに。
秒で逸らしてしまった視界では、先輩の顔なんか直視できなくて。
いっそのこと、もう男らしく、ぜんぶ言ってしまえばいい。
それなのに続く言葉は出てこない。
……あー、俺のバカ。