俺にしときませんか、先輩。


公園を抜けて東よりに進むと、見慣れた大通りに出る。



「…あ、朝浦さん」


立ち並ぶ店を横目で通り過ぎながら歩いていたら、右にある雑貨店のなかから先輩を呼ぶ声がした。


それに反応した先輩が後ろでぱっと手を振りほどく。



……だれ?

………いや、見覚えがある。


同じ制服、つまりは同じ学校。

先輩に向ける笑顔で、あーこの間の…と思い出す。



「篠崎くん、今、帰り?」

「うん、ちょっと用があって。
……朝浦さんは、えっと…」



篠崎、というらしい、その男は、俺と先輩を見比べながら口ごもる。

その視線に察したように先輩がこっちを向いた。



「あっ、この子は友達の弟で、私の弟みたいなもんでもあって、さっきたまたま会ったからちょっと話してて」

「そう、なんだ」

「うん、そうそう」

< 64 / 214 >

この作品をシェア

pagetop