俺にしときませんか、先輩。
その言葉に、さすがの俺も反応する。
水色の髪を留めるようのピンが、先輩の瞳に映り込んだ。
……へえ、好き勝手やってくれるじゃん、俺の目の前でさ。
べつに不意のプレゼントなら、俺だってあげたし。
先輩の好きなパン、しかも1個じゃなくて大量に。
「朝浦さんに似合うと思って」
「いいの!? ありがとう…」
「こちらこそだよ」
………うん、黒だね。
この人、完全に黒。
先輩に向ける嬉しそうな顔といい、プレゼント攻撃といい、俺みたいな下心じゃなくて純粋にやってるんだろう。
ただ、そんなことは関係ない。
由都、やばいよって。
本能がそう告げてる。
だから、俺にとって、この人は黒。
「じゃあ、またね」
またっていう機会が、俺とあの人にもあるなら、その時は牽制くらいしてやる。
颯爽と去っていく後ろ姿を目で追いながら、そう決心した。