俺にしときませんか、先輩。


「ごめんね由都、待っててもらって」

「大丈夫です」


「はい」

「え?」



すっと前に出てきた綺麗な手。

予行デートでしょ?って先輩がやんわりと笑う。


……本当にマジで、予行じゃなかったらいいのに。

そう思いながら小さな手を握った。




「……さっきの人、友達とかですか?」


喉のすぐそばまで出かかっていた言葉。

そのまま引っ込めておけばいいのに、まだまだ子供な俺は、気になって気になって、やっぱり聞いてしまう。



「篠崎くん? えっと、友達…なのかな? 何回か話したことあるんだけど、いい人でね、」

「先輩」

「ん?」

「やっぱりいいです」

「え?」

「その人のこと、話さないでください」



今、たぶん、怖い顔をしてるんだと自分でもわかる。

せっかくパンとかで稼いだポイントも、もしかしたらマイナスになったかも。
< 69 / 214 >

この作品をシェア

pagetop