俺にしときませんか、先輩。
「ごめんね由都、待っててもらって」
「大丈夫です」
「はい」
「え?」
すっと前に出てきた綺麗な手。
予行デートでしょ?って先輩がやんわりと笑う。
……本当にマジで、予行じゃなかったらいいのに。
そう思いながら小さな手を握った。
「……さっきの人、友達とかですか?」
喉のすぐそばまで出かかっていた言葉。
そのまま引っ込めておけばいいのに、まだまだ子供な俺は、気になって気になって、やっぱり聞いてしまう。
「篠崎くん? えっと、友達…なのかな? 何回か話したことあるんだけど、いい人でね、」
「先輩」
「ん?」
「やっぱりいいです」
「え?」
「その人のこと、話さないでください」
今、たぶん、怖い顔をしてるんだと自分でもわかる。
せっかくパンとかで稼いだポイントも、もしかしたらマイナスになったかも。