俺にしときませんか、先輩。


小学生とモグラたたきって……なかなかないシチュエーションですよ。

ていうか、負けたんですか。



「よしっ、由都、私と勝負ね。やり方、わかる?」

「わかります」



先輩のよーいどん、が勢いよく店内に響く。

その声に笑ってしまいながら、地面からこんばんはするモグラを全力で叩いて回る。

隣では、はしゃぎながら楽しんでいる先輩。




「そこまでー!
きみの勝ちだ、おめでとう!」


音声が喋ったのと同時に俺の前の画面がキラキラと点滅した。



「俺の勝ちです」


勝者の微笑みを見せると、先輩がむっと頬を大きくさせる。

そんなことしても可愛いだけだけど。



「もう一回!」

「いいですよ」



負けず嫌いな先輩だから、そう言うと思った。

先輩と一緒にいられるなら何回でもできるから、俺が勝ちまくって先輩がずっと対抗心を燃やしてくれたら……って悪い感情が現れたりもする。


あー本当に、少しでいいからモグラに向けるその熱中ぶりで、俺のことも見てくれないかな、なんて、そんなことを思った。


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