俺にしときませんか、先輩。
芙紗奈side
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「まって、もうこんな時間……!」
店のなかで流れていた音楽がゆったりしたものに変わって、ようやく気づく。
時計の針が20時を回っている。
「由都、なんかものすごい時間経ってない!?」
「そうですね」
「そうですねって、教えてよ!」
「先輩がもう一回ってずっと繰り返すからじゃないですか」
「なっ…」
そうだ、その通りだ。
否定できない…。
時間を忘れて楽しむなんて久々で、ちょっと、いやかなり、びっくりなんだけど。
「俺たちだけですよ、1時間もモグラたたきやってんの」
「…そうね」
うあー、やっちゃった。
由都だって、ぜったい呆れてるにちがいない。
「ふっ」
ほらね、呆れ笑い。
「まあでも先輩、かわいかったです」
今頃、脳内ではモグラたたき好きの先輩って文字がプリントアウトされてるはずで……
「…は?」
「なんですか」
「いま、かわいいって聞こえた」
「…そう言いましたけど」