双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
＊＊＊

一日の仕事を終えると滞在していたホテルへと戻った。

柚希たちのもとへ向かう準備をして部屋を出ようとしたところで携帯が震えた。

柚希からの電話かと思い、ディスプレイを確認するとそこには意外な人物の名が表示されていた。

電話に出るか出ないか迷ったものの、少し身構えながら通話ボタンを押した。

「もしもし」

『久しぶりだな。元気にやっているのか？』

懐かしい声色が耳に届いた。電話の相手は父だ。

家を出て以来、病院内で顔を合わせることがあっても会話を交わすことはなかった。

「ええ。元気にやっています」

少しだけ自身の心音が大きくなったのを感じた。どうやら緊張しているらしい。

『そうか』

「はい」

久しぶりの親子の会話はどこかぎこちなく会話が続かない。母とは家を出てからも連絡を頻繁に取り合っていたが、父とは疎遠だった。

父に柚希とのことを認めてもらいたい。それがいちばんの想いだ。

それを父が受け入れてくれないならば、縁を切ることも辞さない。その想いで家を出たのだから下手にでるつもりはない。
< 105 / 171 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop