双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
そもそも、彼は四年前に婚約者と結婚してアメリカにいった身。既婚者であるはずなのに、今度ゆっくり会いたいなんて意味が分からない。

そういえば、左手の薬指に指輪をしていたっけ? 

そんなことを確認する気持ちの余裕はなかった。とにかく今日この日を乗り切れば彼との接点は消えるのだから、深く考えるのはやめよう。

「……ってば」

ん?

「姉ちゃん! さっきからぼーっとしているけど話、聞いてた?」

「ご、ごめん。聞いてなかった」

「最近、姉ちゃん変だよ? なんかあったの?」

「いや、別に」

仁紀は意外と鋭い。私の些細な変化にいつも気づいてしまうから。バツが悪くなって思わず俯いた。

「まぁ、その話は今度ってことで。今日の父さんの退院の迎えなんだけどさ、姉ちゃんが行ってきてくれる?」

「え? なんでよ? 仁紀が行くって話だったじゃない!」

次の瞬間、まさかの言葉が返ってきて、私は高速な瞬きをくり返しながら仁紀を見つめる。

今日までなんとか病院に行くこと避けてきたのに。最後の最後にこんなのってあんまりだ。
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