双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
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【蒼斗side】

高齢化が進む現代。製薬分野への期待は大きく、有望な分野であるかのように思うだろう。

だが、日本の製薬会社の成長率は他の先進国の平均を大きく下回る。これは政府による薬価抑制があるためだ。

日本の製薬会社の生存競争は非常に厳しいものがある。

その競争を勝ち抜くには、新薬を独自で開発することがもっとも有効な手段であるが、それができない製薬会社は日本の市場を取り合うしかない。

東雲製薬は後者にあたった。

父の病院と東雲製薬は蜜な関係にあり、東雲製薬にとって父の病院は、最大の取引相手だった。俺の見合い相手に東雲製薬の令嬢が選ばれたのは、そういう関係があったから。

だが、俺がその見合いを頑なに拒んだため父の目論見どおりに事は進まなかった。この頃すでに柚希との将来を考えていた俺にとって、父の要求は呑めるものではなかったのだ。

見合い相手である東雲製薬の令嬢、彩乃(あやの)さんも実はこの見合いに乗り気ではなかったことも、話が進まなかった要因だ。

実は彼女にも付き合っている男性がいた。

一度だけ彼女と食事の機会があったが、そのときにそれを告げられ、うまくこの見合いを断ってほしいと懇願されていた経緯がある。
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