双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
なかなか進まない見合い話。

父はしびれを切らし直接柚希に会いに行き別れるように迫った。

そのタイミングで柚希に何者かからの嫌がらせがあり、結果俺たちは別れた。

別れてからも俺は柚希のことが忘れられず、見合いを断る口実としてアメリカへと渡り父のもとを離れた。

見合い話は流れたが、父の病院と東雲製薬は友好な関係を築いていた。

が、あるときを境に父がもっと好条件を提示してきた製薬会社に取引先を替えた。血も涙もないように思えるが、経営者としては最善の選択をすることは当然のことだ。

東雲さんは何度も父に会いに来て話し合いの場を求めたが、父はそれに応じず。ほぼ門前払いだったと聞いた。

結果的に父の判断が東雲製薬にとって大打撃を与えることになり、東雲製薬は海外の製薬会社に買収され、経営陣は一掃される形になった。

それがこの誘拐事件の根底にあるきっかけだったのだ。

今思えば、その予兆はあったのだ。

数週間前に聞いた〝彼女の忠告〟だ。

まさかこんな形で現実になるとは思いもしなかった。

数週間前、ホテルのロビーでばったり東雲さんの娘さんの彩乃さんに会った。

そのときに彼女はどこか思いつめたような表情だった。そして、その場を離れようと瞬間、彩乃さんは意を決したように話し出した。
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