双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
「でも、あの純粋無垢な笑顔を見ていると手をかけることができなかった。こんなにも(けが)れきった私のことを、なんの疑いもせずに慕ってくれる優斗くんを見ていたら……」

「お父さん!」

園内に若い女性に声が響き、意識がそちらへと動く。

こちらに向かって走ってくる女性の姿が目に飛びこんできた。

その顔には見覚えがあった。あの日、ホテルから蒼斗さんと一緒に出てきたあの女性だ。

彼女がシノさんの娘さんで、蒼斗さんの見合い相手だった人。

車の中で蒼斗さんの話しを聞き、あの日ホテルから一緒に出てきた真相を知った。

「父が本当にすみませんでした!」

彩乃さんがその場に跪き、手をついて謝る。その肩は震えている。

「なぜここに……」

「お父さんのことが心配だったからに決まっているじゃない。もうこんな人様に迷惑をかけることはやめて」

「彩乃には関係ない。私の気持ちなんかどうせ分からな……」

「誰かを傷つけても復讐を遂げてもそこからはなにも生まれないんだよ。私もお母さんもそんなことを望んでなんかない。ただ昔みたいに優しいお父さんに戻ってほしいだけなの」

彩乃さんの切実な想いを聞き、胸が締め付けられた。

シノさんの目にも涙が滲んでいる。
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