双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
「病室まで案内するよ」

「いえ、ひとりで大丈夫で……」

「柚希は方向音痴だから、その言葉は信用ならない。さぁ行くぞ」

ふいに引かれた左腕。触れた腕から伝わってくる蒼斗さんの温もりに一瞬、あの頃を思い出し頬が紅潮していくのが分かった。

平静を装ってみるもヤバい。心臓が口から飛び出そう。

「腕を離してもらえますか? 誰かに見られたら誤解されますし」

「俺は誤解されても構わないけれど。まぁ、ここは病院で患者さんの目もあるから、柚希の言う事を聞くことにするか」

解放された腕に残る蒼斗さんの感触に、心がぎゅっと苦しくなっている。もう何年も前に終わった関係なのに、心がこんなにも乱されるなんて。

自分でも予想外だった。

「お忙しいのにお手間を取らせてしまってすみません」

「なんでそんなに他人行儀なんだ?」

「それは……」

だって私たちは、もうとっくの昔に赤の他人になったから。

私の領域に踏み込んできてほしくない、なんて面と向かって言う勇気は私にはなくて、視線を泳がせる。
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