双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
桜色の風が頬を通り過ぎていく。頭上を見上げれば雲一つない真っ青な空が広がっている。

あの日を思い出す。

「俺らが出会った日もこんな天気で、桜吹雪が待っていたよな」

隣にいる蒼斗さんも同じことを想っていたらしい。

「はい。ここまで来るのに本当にいろいろありましたね」

「ああ。そうだな。なにより父があんなにデレデレな姿を見る日が来るとは夢にも思わなかった」

茶房のテラスの方を見て蒼斗さんが嬉しそうに笑う。

そこには微笑ましい光景が広がっている。

私の両親と弟、蒼斗さんのご両親。そして蒼汰と優斗。そこにいる誰もがみんな笑顔だ。

最近、私たちの中で頻繁に籍を入れる話が出ている。正式に籍を入れる前に両家の顔合わせをしたくて私たちの思い出の地である、父の旅館で食事会をすることになった。

今日はメンテナンス日ということで休館しているため館内は静まり返っている中で、蒼斗さんのお父さんと鬼ごっこをしながら、はしゃいでいる蒼汰と優斗の声が響き渡っている。
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