双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
「いつだったか、職場の飲み会で少し飲んだだけで酩酊(めいてい)して帰ってきて、ずっとトイレで吐いていたことがあるじゃないですか」

「あのときは柚希が介抱しくれて本当に助かったよ。てか、俺がアルコールに弱いことを覚えていてくれたんだな」

「いや、別に。……普段しっかり者で大人な蒼斗さんが、あそこまで乱れるのが意外で鮮明に覚えていただけです」

「そうか」

蒼斗さんがクスッと笑いながら、お寿司を箸で口に運んだ。食べる姿も凛としていて絵になる。

それにしてもこんな風に会話を交わすことになるなんて、誰が想像できただろう。私にしてみたら天と地がひっくり返るくらいの出来事だ。

それからぎくしゃくしながらも、他愛もない話を交わすこと数十分。

蒼斗さんがトイレに行くと言ってその場から離れ、やっと緊張から解放された私は、ふーっと息を吐いて椅子に座り込んだ。

一時はどうなるかと思ったが、このまま他愛もない会話をして乗り切れそうな気がしてきた。
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