双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
どうして、ここに彼がいるのだろう?

アメリカに行っているはずでは?

目を見開く私の瞳に映るのは、かつて私が心から愛した男性。鳴宮(なるみや)蒼斗(あおと)だ。どういう因縁か、アメリカにいると思っていた彼が父の手術を執刀したらしい事実を受け入れられずにいる。

百八十センチを超える高身長にモデルのような長い手足の持ち主の彼。半袖の青色のスクラブから、ちらりと見える鍛え上げられた上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)からは男らしさが漂う。歳は私より六個上。

清潔感漂う黒髪の短髪を無意識に触る(くせ)は、どうやらあの頃と変わっていないらしい。そしてシャープな顎ラインに鼻筋が通った綺麗な顔も健在だ。きっと世の女性の大半は彼に好意を抱くだろう。

「こちらが椎名(しいな)さんの術前のエコー写真になります。このあたりに嚢状瘤(のうじょうりゅう)が認められ、右冠動脈(うかんどうみゃく)閉塞(へいそく)も見られました。おそらく胸の痛みは、瘤で気管支が圧迫されていたためだと考えらます」

口角が上がった薄型の唇から淡々と言葉が発せられると同時に、切れ長で奥二重な瞳が私を捉え続ける。
< 3 / 171 >

この作品をシェア

pagetop