双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
「柚希は変わらず優しいな」

「お仕事に支障があったら困りますから」

「明日は休みだから大丈夫だ」

「そうですか」

「なぁ、柚希」

「なんですか?」

「手、貸して?」

「手ですか? いいですけど」

言われるがままに手を差し出した。きっと立ち上がるのに介助してほしいということだろうと思っていたのに、蒼斗さんはその手を自分の頬にピタッとくっつけてふわりと微笑んだ。

「ちょっと……」

「冷たくて気持ちいい。少しだけこうさせてくれ」

熱を持った蒼斗さんの頬。

ずるいな、この人は。

こんな子犬みたいな憂いを帯びた目で見つめられれば、ダメって言えなくなるじゃない。

指先から高鳴った心音が伝わっていきそうだ。

「ここで俺ら会ったんだよな」

「そうでしたっけ。そんな昔のこともうとっくに忘れました」

言葉ではそう言ったけれど本当は私も覚えている。忘れるはずがない。

あの日もこんな風に真っ青な空が広がっていて、桜色の風が吹いていた。
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